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東京高等裁判所 昭和56年(ラ)27号 決定 1981年2月04日

抗告人

中村木材株式会社

右代表者

中村光吉

抗告人

中村光吉

右両名代理人

正木宏

主文

本件抗告を却下する。

理由

一抗告代理人の抗告理由は別紙のとおりであるわ

二抗告理由中競売及び競落期日公告(以下公告という)記載の賃貸借の始期が誤つているとの主張について検討する。

記録によれば、本件競売の基礎となつた抵当権は昭和五二年六月二三日及び同年七月五日設定され、同年六月二四日及び同年七月六日にそれぞれの旨の設定登記を経たことが認められるので、公告記載の賃貸借の始期はいずれもその後の時期に属し、競落人に対し、皆川修の賃貸借(期間三年)のみが民法三九五条所定の限度で対抗でき、その他の者の賃貸借はいずれも対抗できないというの外はないが、右各賃貸借の始期とその引渡の時期が抗告人らの主張のとおりとすれば、これらはすべて右抵当権設定登記以前の時期に属し、右各賃貸借はいずれも競落人に対抗できることに帰着する。

しからば賃貸借の公告が前記のとおり行われたことにより、本件競売建物は皆川修の占有部分を除き賃貸借の負担なきものとして、抗告人ら主張のような公告がなされた場合に比し高価に競落されたことが明らかである。それ故抗告人ら主張の理由は、債務者及び所有者である抗告人らが民事執行法附則四条旧競売法三二条民事訴訟法旧六八〇条所定の競落許可決定に因り損失を被むる可き場合にあたらない。

なお抗告人らが競落人から後日瑕疵担保責任を追及されるか否かは将来のことに属し、かような可能性があるからといつて、抗告人らが損失を被むる可き場合にあたるとはいえない。

三抗告理由中、公告記載の賃貸借保証金の金額が真実の金額より少く、賃借面積が真実の面積より狭いとの点は、これにより競落価格が低下するとはいえず、抗告人らが右決定により損失を被むる可き場合にあたらない。

四抗告理由中、公告記載の賃借人の氏名が異るとの点についても、前段と同様である。

五よつて本件抗告を不適法として却下すべく、主文のとおり決定する。

(鰍澤健三 沖野威 佐藤邦夫)

【抗告の理由】

一、本件競落物件のうち建物の賃貸借関係についての競売公告の記載が真実と相違している。競売公告の記載の誤りを指摘すると、別紙のとおりである。

二、債務者ら本件抗告の申立人は、競売公告の誤りを競落許可決定後において記録の閲覧をして、これを知つた。公告の誤りは、賃貸借取調報告書の誤りに基づくものである。取調時に執行官が点検した契約書と明白に異るからである。

三、賃借権と本件抵当権との優劣関係は、別途賃借人と新所有者になる競落人間で解決されることになろうが、現所有者で賃貸人である申立人らは、その優劣に関する有力資料ともいうべき競売公告の記載によつて、利害が大きく左右される。公告どおりとすれば、賃貸借関係は新所有者に承継されないことになり、結果的に申立人らの負担増となる。

四、本件賃借人は、建物新築時からの入店者またはその承継者であつて、順位一番の抵当権設定以前に引渡しを受けていた者である。賃貸借取調報告書の明白な誤りといえるのは、賃貸借の始期が報告どおりとすると、建物新築時から一年間入店者皆無ということになる。そのような事実もないし常識にも反する。

ちなみに、賃料は、当初から商工組合中央金庫に債務返済のため、その全部が振込まれているので、始期はその入金調査によつても判明する。また、賃貸借契約書の一通は商工組合中央金庫に保管されていることを付言しておく。

五、公告の記載事項の瑕疵は、異議事由にも即時抗告の理由にもなりうる。よつて、競売法三二条二項によつて準用される民訴法六八〇条による即時抗告の申立をする。

六、証拠方法として、各賃貸借契約書写のほか必要に応じて追加する。

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